解説を読んだらわかる。でも、自分では解けない。

数学を教えていると、「解説を読んだら意味はわかる。でも、自分で解こうとすると手が止まる」という相談をよく受けます。

  1. 問題を解く
  2. わからない
  3. 解説を見る
  4. 「なるほど」と思う
  5. 少し時間が経つと、また解けない

解説を読んでいるときは、一つひとつの式変形にも納得できています。それなのに、問題だけを前にすると最初の一手が出てこない。

これは珍しいことではありません。では、なぜこんなことが起こるのでしょうか。

「わかる」と「自分で思いつく」は、別の力

解説を理解できることと、自分で解法を選べることは、同じではありません。

たとえば、二次関数の最大値・最小値を考える問題を見てみます。

y=x24x+7y=x^2-4x+7y=(x2)2+3y=(x-2)^2+3

解説を見れば、「なるほど、平方完成するのか」と納得できます。しかし自力で解くときには、「最大値・最小値を知りたい → 頂点が見える形にしたい → だから平方完成しよう」という方針を、自分で選ばなければなりません。

式を変形する作業より前にある、この判断こそが大切です。

「わかる」と「思いつく」は違う

解説を見るとき

  1. 問題
  2. 平方完成する
  3. 頂点を見る
  4. 最大・最小
  5. 「なるほど!」

自力で解くとき

  1. 問題
  2. ?????
  3. 平方完成する
  4. 頂点を見る
  5. 最大・最小
「?????」を自分で決める力が必要

解説には「答えまでの道」がすでに描かれている

解説を読むことは、目的地まで赤い線が引かれた地図を見ることに似ています。スタートからゴールまでの道筋が示されているため、その線をたどれば迷わず進めます。

一方、入試本番で渡される地図には、赤い線がありません。いくつもある道から、自分で進む方向を決める必要があります。

数学で必要なのは、道順を覚えることだけではありません。問題の条件と求めるものを見て、どの道を選べばよいか判断する力です。

赤い線が引かれた地図

解説あり

  1. スタート
  2. 示されたルート
  3. ゴール
「この道を通ればいい!」

入試本番

スタート
???
「どの道を選ぶ?」
数学で必要なのは、道順を覚えることだけではなく、どの道を選ぶか判断する力。

大切なのは「何をしたか」より「なぜしたか」

復習で確認したいのは、解答に書かれた操作の名前だけではなく、「なぜその解法を使ったのか」です。

  • 平方完成しました。→ なぜ?
  • 相加・相乗平均を使いました。→ なぜ?
  • 判別式を使いました。→ なぜ?
  • 場合分けしました。→ なぜ?

数学が得意な人は、公式をたくさん知っているだけではありません。「この状況なら何を調べればいいか」という判断のストックを持っています。

結論だけを覚えるのではなく、求めたいことから解法までをつなぐ理由を、自分の言葉で説明してみましょう。

「何をする?」ではなく「なぜする?」
  1. 最大値・最小値を求めたい
  2. グラフの形を知りたい
  3. 頂点を知りたい
  4. 平方完成する
結論だけでなく、その間にある考え方をつなぐ。

復習するときに確認してほしい3つのこと

問題を解き直すときは、模範解答をもう一度再現して終わりにせず、次の3つを確認してみてください。

  • 問題のどの部分を見て、最初の方針を決めたか
  • なぜその公式・解法を使えると判断したか
  • 同じ考え方が使えるのは、どんな問題か

たとえば「二次式の値の範囲を知りたい」なら、そこから「グラフで考えたい」「頂点を知りたい」「だから平方完成する」と、考え方を一段ずつつなぎます。

  1. 二次式の値の範囲を知りたい
  2. グラフで考えたい
  3. 頂点を知りたい
  4. 平方完成する

「もう一度解けた」で安心しない

解説を読んだ直後にもう一度解けても、それだけで「できるようになった」とは限りません。頭の中に、さっき読んだ解説の道筋が残っているだけかもしれないからです。

少し時間を空け、解説を閉じて、白紙の状態からもう一度解いてみてください。どの条件に注目し、何を求めるために、どの解法を選ぶのか。そこまで自分で説明できるかを確かめます。

もし途中で止まったなら、その場所こそが本当の復習ポイントです。できなかったことではなく、次に整理するべきことが見つかったと考えてみましょう。

解説を読むときも「先回り」してみる

解説を最初から最後まで受け身で読むのではなく、途中で一度止めて「次に何をする?」と自分に聞いてみる方法もおすすめです。

たとえば、「ここで x24x+7x^2-4x+7 を……」まで読んだら、そこで止まります。そして「最大値・最小値を考えたいから、次は平方完成かな」と予想してから続きを確認します。

「予想 → 確認」の形で解説を読むと、ただ解答を眺める勉強から抜け出しやすくなります。予想が違っていた場合も、なぜ別の方針が選ばれたのかを考える材料になります。

「覚えること」が悪いわけではない

数学でも、覚えることは必要です。平方完成の手順、三角比の公式、微分公式などは、問題を解くための大切な道具です。

ただし、道具を持っていることと、使いこなせることは同じではありません。工具箱にハンマー、ドライバー、レンチがそろっていても、目の前の作業にどれを使うか決められなければ作業は進みません。

公式を覚えたうえで、「どの道具を、なぜ使うのか」を判断する。その二つがそろって、初めて自力で問題に向き合えるようになります。

M.E.で大切にしていること

M.E.では、問題が解けたときにも「正解。次。」で終わらず、「なんでそれを使った?」と聞くことがあります。答えが合っていても、選んだ理由が曖昧なら、少し形が変わった問題で手が止まるかもしれないからです。

反対に、間違えた問題でも、途中の考え方が良ければ、そこはきちんと評価します。どこまで自分で考えられていて、どこで判断がずれたのかを整理すれば、次につながる学びになるからです。

数学には、答えだけを見ていると見えないことがたくさんあります。だからM.E.では、途中式と、その途中で何を考えていたかを大切にしています。

まとめ

「解説を読めばわかるのに、自力では解けない」とき、自分は数学ができないと決めつける必要はありません。解説の内容を理解する力は、すでにあります。次に育てたいのは、方針を自分で選ぶ力です。

確認したいのは、解説の内容を理解できたかだけではなく、なぜその解法を使うのかを自分で説明できるかです。

  1. 何が聞かれている?
  2. そのために何がわかればいい?
  3. 何を使えば、それがわかる?

この順番で考える習慣がつくと、数学は「知っている解法を探すゲーム」から、「今ある情報から次の一手を考えるもの」へ少しずつ変わっていきます。