「先生、数学って何から勉強したらいいですか?」
これ、授業をしているとよく聞かれる質問です。
「とりあえず問題集を最初からやった方がいいですか?」 「苦手な数ⅠAから全部やり直した方がいいですか?」 「そろそろ入試問題を解いた方がいいですか?」
うんうん、どれも気になりますよね。
特に受験が近づいてくると、周りの友達が難しい問題集を使い始めたり、過去問を解き始めたりして、「自分も何かしないと!」と焦ることがあると思います。
でも、そんなときに少しだけ考えてみてほしいんです。
「今の自分には、何が一番必要なんだろう?」
たとえば、二次関数の平方完成がまだ不安な人と、基本問題は解けるけれど入試問題になると手が止まってしまう人。
同じ「二次関数を勉強する」でも、やるべきことは違いそうですよね。
前者なら、まずは計算やグラフの基本をしっかり固めたい。後者なら、基本問題をもう一度最初から何周もするより、問題の条件を整理して、方針を考える練習をした方がよいかもしれません。
つまり、問題集を選ぶ前に、「どこを目指していて、今の自分はどこにいるのか」を知ることが大切なんです。
今回は、ぼくが普段の指導でも大切にしている、数学の学習計画の立て方についてお話しします。
難しい計画表を作る話ではありません。
「今週は、何をできるようになろうか?」
そんなところまで、一緒に考えていきましょう。
1. まずは、ゴールを少しだけ具体的にしてみよう
さて、学習計画を立てるとなったら、まず何から考えればいいでしょうか?
ぼくは、最初に「どこを目指しているのか」を確認するようにしています。
「和歌山大学に行きたいです!」
いいですね。じゃあ、もう少しだけ聞いてみます。
「何学部を考えてる?」 「数学は共通テストだけ? それとも二次試験でも使う?」 「数学でどのくらい点数を取りたい?」
こんなふうに聞くと、「あれ、そういえば詳しくは知らないかも……」となることもあります。
でも、それでいいんです。最初から全部知っている必要はありません。
知らないことがわかったら、そこから調べてみればいいんですよね。
志望大学の配点や出題範囲、過去問を見てみると、「この大学では数学がかなり大事なんだな」とか、「まずは基本的な問題を確実に解けるようにしたいな」といったことが、少しずつ見えてきます。
たとえば、数学の配点が大きく、合否に与える影響も大きい大学を目指すなら、数学を得点源にするための勉強を考えたいところです。
一方で、数学以外の科目とのバランスを考えながら、まずは基本的な問題で失点しないことを目指す場合もあるでしょう。
同じ「数学を頑張る」でも、目指す大学によって、必要な勉強は少しずつ変わってくるんです。
もちろん、「去年の過去問に出ていなかったから、この分野は勉強しなくていい」ということではありません。
数学は、ある分野の理解が、別の分野を学ぶための土台になっていることも多いですからね。
まずは、
「志望大学で、どんな数学の力が必要なんだろう?」
と考えてみましょう。
まだ志望大学が決まっていない人もいると思います。
そんな人は、今すぐ一つに決めなくても構いません。気になる大学や学部をいくつか調べながら、学校で習っている数学をしっかり理解していきましょう。
今やっている勉強も、これから先につながっていきますからね。
志望大学で必要な力
出題範囲・難度・目標得点
現在の自分の力
できること・つまずいていること
足りない力を明確にする
何を優先して勉強するか
今週やるべき勉強
教材・範囲・復習方法を決める
2. 次は、自分の「現在地」を見てみよう
ゴールが少し見えてきたら、次は今の自分の力を確認してみましょう。
ここで大切なのは、「数学が苦手」という言葉だけで終わらせないことです。
たとえば、二次関数が苦手だとしましょう。
でも、よく考えてみると、
「平方完成の計算がまだ不安」
という人もいれば、
「グラフは描けるけれど、文字を含む最大・最小の問題になると場合分けがわからなくなる」
という人もいます。
あるいは、
「問題集の基本問題は解けるのに、初めて見る問題だと方針が思いつかない」
という人もいるでしょう。
どれも「二次関数が苦手」には違いありませんが、必要な勉強は同じではありませんよね。
じゃあ、自分はどこで困っているんだろう?
それを知るために、最近のテストや模試、普段使っている問題集を少し見返してみてください。
「どの単元が苦手なのか」だけでなく、「その単元の、どこで困っているのか」まで考えてみるんです。
知識や計算で困っている?
公式や定義の意味が曖昧だったり、基本的な計算でつまずいていたりする場合です。
たとえば、平方完成の計算そのものが不安なら、文字を含む最大・最小の難しい問題に進む前に、まずは計算やグラフの基本を確認したいところです。
「こんな簡単なところに戻っていいのかな?」と思うかもしれません。
でも、土台が曖昧なまま先に進むと、後でまた同じところで困ってしまうことがあります。
必要なところに戻るのは、遠回りではありません。
典型問題の考え方が曖昧?
「解説を見ればわかるんだけど、自分で解こうとすると手が止まるんです」
これも、よくある悩みです。
そんなときは、解法をもう一度覚え直すだけでなく、
「なぜ、この式を作るんだろう?」 「何を求めるために、この方針を選んだんだろう?」
と考えてみるとよいでしょう。
解法を知っていることと、自分でその解法を選べることは、少し違うんですよね。
このあたりは、別の記事「解説を読めばわかるのに、自力では解けない」の中でも詳しくお話ししています。
初見の問題になると手が止まる?
基本的な知識や典型問題はある程度身についているのに、初めて見る問題になると困ってしまう場合です。
この段階では、問題の条件を整理して、
「何がわかっている?」 「何を求めたい?」 「そのために、何が必要?」
と考える練習が大切になってきます。
いきなり解法を思いつこうとするのではなく、今ある情報から少しずつ考えていくんです。
もちろん、実際にはこれらが重なっていることもあります。
計算も少し不安だし、典型問題の理解も曖昧。そんなこともありますよね。
だからこそ、今の自分がどこで困っているのかを、できるだけ具体的な言葉にしてみてください。
「数学が苦手」という大きな悩みを、今日から取り組める小さな課題に変えていく。
現在地を知ることは、そのための第一歩です。
知識・計算
公式や定義の意味はわかる?
基本的な計算はできる?
典型問題
解法の理由を説明できる?
自分で方針を選べる?
初見問題
条件を整理できる?
求めたいものから考えられる?
同じ「苦手」でも、必要な勉強は一人ひとり違います。
3. ゴールと現在地の間に、何が足りないだろう?
ここまで来たら、いよいよ学習計画を考えていきます。
といっても、いきなり1年間の予定を全部決める必要はありません。
まずは、志望大学で必要な力と、今の自分の力を比べてみましょう。
「今の自分には、何が足りないのかな?」
「その力を身につけるためには、何から始めるとよさそうかな?」
こんなふうに考えていきます。
少し具体例を見てみましょう。
ある高校2年生の学習計画を考えてみる
国公立大学の理系学部を志望している高校2年生を想定します。
ここからは、学習計画の考え方を説明するための架空の例です。
| 分野 | 今の状況 | これからの勉強 |
|---|---|---|
| 二次関数 | 基本計算はできるが、文字を含む最大・最小が苦手 | 場合分けの考え方を整理し、典型問題で定着させる |
| 三角比 | 公式は覚えているが、図形とのつながりが曖昧 | 図や単位円を使って、意味から復習する |
| 数列 | 基本的な漸化式は解けるが、応用問題で止まる | 基本を維持しながら、方針を考える演習へ進む |
| ベクトル | 学校で学習している途中 | 学校の進度に合わせて、基本をしっかり固める |
さて、この生徒が、
「数学が苦手だから、数ⅠAの問題集を最初から全部やり直そうかな」
と考えたとします。
もちろん、それが必要な場合もあります。
でも、この生徒の場合はどうでしょうか?
二次関数は、すべてがわからないわけではありません。基本的な計算はできているので、文字を含む最大・最小の考え方を重点的に復習した方がよさそうです。
三角比は、公式を覚え直すだけでなく、図形とのつながりを理解することが必要かもしれません。
一方、数列は基本的な漸化式が解けているのであれば、基礎問題を何周もするより、少し発展的な問題に挑戦する時間を作ってもよいでしょう。
ベクトルは学校で習っている途中なので、まずはその日の授業をしっかり理解して、基本問題を解けるようにしていきたいですね。
こんなふうに見ていくと、同じ数学でも、分野によって今やるべきことが違うのがわかります。
また、今後の学習の土台になる分野は、過去問での出題頻度だけでは優先順位を決められません。
たとえば、三角比の理解が曖昧なまま三角関数を進めると、後で困ってしまうこともあります。
「何が苦手か」だけでなく、「これから何を学ぶために必要なのか」も考えてみましょう。
全部を同じように頑張るのではなく、今の自分に必要な勉強を選んでいく。
これが、学習計画を立てるうえで大切な考え方です。
4. 「今月頑張る」を、「今週これをやる」に変えてみよう
さて、勉強する分野が決まりました。
「今月は二次関数を頑張ろう!」
いい目標ですね。
でも、月曜日に机に向かったとき、何をすればよいかすぐにわかるでしょうか?
「今日は何をやろうかな……」
と考えているうちに、気づけば時間が過ぎてしまった。そんな経験がある人もいるかもしれません。
そこで、学習計画をもう少し具体的にしてみましょう。
たとえば、
「今月は二次関数を頑張る」
という目標を、
「今週は文字を含む最大・最小の考え方を復習する」
「火曜日は問題集の基本問題を解く」
「木曜日は、火曜日に間違えた問題をもう一度解く」
というように、実際の行動まで落とし込んでいきます。
部活と両立する高校2年生の1週間
先ほどの高校2年生が、学校の課題や部活動と両立しながら、数学の自習時間を週6時間ほど確保できるとしましょう。
たとえば、こんな計画が考えられます。
部活と両立する高校2年生/数学の自習時間は週6時間
| 曜日 | 学習内容 | 目安 |
|---|---|---|
| 月 | 二次関数:文字を含む最大・最小の考え方を復習 | 45分 |
| 火 | 二次関数:基本問題を解き、場合分けの理由を確認 | 60分 |
| 水 | 学校の進度に合わせてベクトルの基本問題 | 45分 |
| 木 | 二次関数:火曜日に間違えた問題を解き直す | 45分 |
| 金 | 三角比:図と公式の意味を整理する | 45分 |
| 土 | 二次関数の応用問題+数列の維持演習 | 60分 |
| 日 | 1週間の振り返り30分+予備時間30分 | 60分 |
| 合計 | 360分 | |
何時間やるかだけでなく、何をできるようにするか。
合計は6時間です。このうち、30分は予備時間にしています。
もちろん、これは一例です。部活動のある日、学校の課題が多い日、定期テストが近い時期などによって、無理のない予定に変えてくださいね。
ここで、もう一つ大切にしたいことがあります。
それは、「何時間勉強するか」だけでなく、「何をできるようにするか」を決めることです。
たとえば、
「今日は二次関数を60分勉強する」
という目標も悪くありません。
でも、
「文字を含む最大・最小の基本問題を解いて、なぜ場合分けが必要になるのかを説明できるようにする」
と考えると、勉強の目的がずっとはっきりします。
時間を使うことが目的なのではなく、その時間で何かを身につけることが目的だからです。
そして、計画は少し余裕を持たせておくのがおすすめです。
毎日びっしり予定を詰め込んでしまうと、学校の課題が増えたり、部活が長引いたりしただけで、計画が崩れてしまいます。
今回の例では、日曜日に30分の予備時間を設けています。
もし平日にできなかった勉強があれば、ここで少し取り戻してもいいですし、予定どおり進んだ週は、無理に新しい課題を増やさず、休息や他科目の勉強に使っても構いません。
計画を守るために勉強するのではなく、数学の力を伸ばすために計画を使う。
この順番を忘れないでほしいと思います。
5. 計画は、立てたあとが大切です
ここまで読んで、
「よし、計画を立てたから、あとはその通りに進めればいいんだな!」
と思った人もいるかもしれません。
もちろん、実行することはとても大切です。
ただ、学習計画は一度作ったら受験まで変えてはいけない、というものではありません。
実際に勉強してみると、思ったより早く理解できることもあれば、予想以上に時間がかかることもあります。
むしろ、やってみなければわからないことの方が多いですよね。
だからこそ、定期的に振り返って、計画を少しずつ調整していきましょう。
たとえば、1週間の終わりに、
「今週やろうと思っていたことは、どこまでできたかな?」 「間違えた問題は、今なら自力で解けるかな?」 「解法を覚えただけでなく、なぜその方針を選ぶのか説明できるかな?」 「来週は次へ進めそうかな。それとも、もう少し復習した方がよさそうかな?」
と考えてみます。
もし二次関数の基本問題が十分に理解できていれば、次は応用問題へ進んでみましょう。
逆に、まだ場合分けの理由が曖昧なら、無理に予定を進める必要はありません。もう少し時間をかけて、理解を深めていけばいいんです。
模試も同じです。
点数や偏差値はもちろん気になりますが、それだけで終わらせるのは少しもったいないです。
「どの分野で失点したのか」
「知識が足りなかったのか、計算で間違えたのか、それとも方針が立たなかったのか」
そこまで見てみると、次の勉強につながるヒントが見えてきます。
計画を立てる。実行する。振り返る。そして、必要に応じて修正する。
このサイクルを繰り返しながら、今の自分に合った勉強を選び直していきましょう。
6. まずは、今週の勉強から始めてみませんか?
ここまで、志望大学から逆算する学習計画についてお話ししてきました。
とはいえ、
「まだ志望大学も決まっていないし、そんなに立派な計画は作れないよ……」
という人もいるかもしれません。
でも、最初から完璧な計画を作る必要はありません。
まずは、最近のテストや問題集を見返して、今困っていることを一つ選んでみてください。
たとえば、
「二次関数が苦手」
というところから始めて、
「文字を含む最大・最小で、場合分けの理由がわからない」
と、少し具体的にしてみます。
そして、
「今週は教科書の例題を復習して、問題集の基本問題に取り組もう」
「週末には、解説を見ずにもう一度解けるか確認してみよう」
と決めてみる。
これだけでも、立派な学習計画です。
大切なのは、最初から完璧な計画を立てることではありません。
目標と現在地を知り、今やるべきことを具体的にして、一つずつ実行していくこと。
そして、うまくいかなかったら、そのときにまた考え直せばいいんです。
数学の勉強は、昨日までできなかったことが、少しずつできるようになっていくものです。
焦らず、でも着実に。
今の自分に必要なことから、一緒に積み重ねていきましょう。
M.E.の学習計画サポート
M.E.では、志望大学や現在の学力、学校・部活動の予定などを踏まえ、一人ひとりに合わせた学習計画を作成しています。
「何から勉強すればいいかわからない」
「今の勉強方法で合っているのか不安」
そんな方も、まずは今の学習状況をお聞かせください。
授業では、ただ解法を教えるだけでなく、「なぜそう考えたのか」を自分の言葉で説明できるところまで、理解を深めることを大切にしています。
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